5戸1の京町家
昭和初期型の5戸1町家です。京都市周辺部によくある、お百姓さんの借家のような構造です。
近隣の方の協力で大変スムーズに工事が進みました。ありがたいです。
現場を担当した大工さんは、足達宗凡棟梁です。
【職人紹介】:大工棟梁:足達宗凡
施工 できるだけ昔の雰囲気を残して構造からリノベーション
2Fオモテが繋がらず、ナカノマから隣と連棟に。借家とはいえ凝った造りです。
まず屋内全体の床組を解体します。隣に音が筒抜けなので、お隣さんに申し訳なかったです。
水回り棟は屋根を残して基礎からやり直し。葛石を据えて水の侵入を防ぎます。
縁側下も水止めに葛石を据えます。左から、三谷君、足達棟梁、岡野さんです。
布基礎のある町家なので、桁行方向にも布基礎と土台を新設し、補強壁の準備をします。
躯体の歪みが直ったので、電線に防護管を巻き、足場を組みます。
フクビのフェノバボードを充填します。断熱性能が比較的高い商品です。
狭い火袋なので大変です。天井を張った後、壁をこそいで塗り替えます。
桟が足りなかったり、折れたりしているのを直しています。左上の職人は天井を洗っています。
棟をめくり、ガラス瓦を8枚設置します。同時に谷樋も取り替えています。
押入や大壁になるところに設置します。長屋なので音漏れを軽減させる措置です。
全部で70ヶ所取り付けました。引手も25ヶ所掘り込みました。
竣工 古い材料をできるだけ利用して再生する
布基礎を隠すために御影石を腰張。その上は籾板。上部壁は黄大津塗です。玄関建具は下桟を足して出入りしやすくしました。
土台は御影石に取替。土間は大磯洗い出し。天井は勾配を外に変えて杉板古色塗仕上。踏込石は再利用です。
火袋は漆喰だと割れやすいので、シルタッチフラット塗。天井は断熱材を充填して杉板古色仕上。新しい町家なので火打があります。
ハシリニワに床を張って台所に。冷蔵庫脇に補強壁新設。タカラのキッチンです。火袋を生かすために吊戸棚ナシです。
左手は大正、正面は昭和の建具です。右手の舞良戸は水廻りにあったものを移設して再利用しました。
床は楢無垢材ラスティック。
階段は勾配がきついのと、構造壁をつくりたかったので、少し伸ばして新調しました。
LDKとして使います。
正面の建具は、2枚共右の壁の手前に入るように作り変えたので、旧ダイドコも合わせて広く使う事ができます。
木部の塗装は、既存合わせオイルスティン塗と、白木を生かしてオスモクリア塗と分けています。
天井の打ち流し化粧板は再利用。お庭側は断熱のために樹脂アルミ複合サッシに変えています。座敷側建具の大正硝子が素敵です。
建具は元々ハシリ入口に使われていたのを再利用。下屋根が低いので、勾配天井になっています。
床や敷居は新しいですが、建具は既存修理しました。
ペンダント照明は古いセードを再利用しました。
竿縁天井に排熱ファンを設置しています。
右手足元にガスコックが見えます。
窓に遮光用のプリーツスクリーンを掛けています。
この部屋の意匠はほぼそのままですが、躯体の歪みや沈下を直し、天井を吊り直したため、見違えるようになりました。
この部屋は元々洋間に改造されていたので、今回も大壁にしています。
また、この部屋だけ連棟になっていないので、窓の両脇に壁を新設し躯体が左右に動きにくくしています。
これに伴い押入を新設し、狭くなったので、天井を少し上げて船底にしてみました。
天井はビニールクロス。壁はジュラックスC塗です。
複雑な長屋で、隣の樋がこちらに入っていたり、瓦が隣に延びていたりと悩む事が多かったのですが、近隣の方がとても良い方ばかりで、大変ありがたかったです。『家を買うときは近所を買え』といいますが、本当ですね。
長屋の真ん中で、どこまで歪みや沈下が直るか心配しましたが、かなり水平垂直を出す事ができ、ほっとしています。
100年後まで使い続けられる町家。こうして、復元作業に携わることができ本当にうれしかったです。
長屋の真ん中で、どこまで歪みや沈下が直るか心配しましたが、かなり水平垂直を出す事ができ、ほっとしています。
100年後まで使い続けられる町家。こうして、復元作業に携わることができ本当にうれしかったです。
現場監督 荒木 勇