真如堂 現代風新町家
NPO運営でご一緒させていただいていた方のお住まいです。
長い間空き家だったのですが、今回、遠方から引っ越してこられる事になりました。
何度も増改築を繰り返されている上に、裏庭の植木が生い茂ってしまい、建物が大変傷んでいます。また、建物全体が東側に大きく傾いているのですが、連棟のために、真っ直ぐに直す事ができません。
でも、2階に愛着のあるお座敷があり、どうしても残したい。。。
今回は、柱を見せる事ができない代わりに、思い切って現代風にアレンジして改修してみました。
京町家の見えないところをきちんと直す

施工前の状態です。左:ミセの間からオクの間を見ています。南側に増築されているため、ナカの間が真っ暗です。右:トオリニワのオクからゲンカンを見ています。2Fにトイレを作り、排水管の下に床を張ったため天井高が大変低くなっています。光も入りません。

一旦床を全解体します。建築当初からの床材は少なく、新建材も混じっています。大壁になりますが、残す柱は一部見せる可能性もあるため、養生しています。
右上:2Fの南側に増築されていた台所を潰したら化粧丸太がでてきました。

左:縁側の柱の根継をしています。屋根仕舞いが悪く、雨が床下に侵入したためです。右:玄関脇の柱をジャッキアップしています。隣家と繋がっているため、建物の倒れは直りませんが、沈下部分は戻す事ができます。

ある程度建物の沈下が直ったら、補強をしつつ、不用な柱を撤去します。キッチン上部の写真で、2F旧トイレの床も見えています。奥様から天井高240cm欲しいとの要望を受けたので、ポストで補強しつつ、小梁や柱を撤去することになりました。

古い柱は傾いていますが新しい柱は真っ直ぐ建てます。取り替えられない柱で構造上重要なところには、ベース基礎打設の上、添柱を新設します。耐震補強をしない隣家とのバランスを考え、布基礎は縁側外周部と水廻りのみ設置します。

台所部分の柱を撤去したため、既存梁の下に補強梁を入れ、ずんぎりボルトで緊結しています。さらに、梁の両脇に添え柱を2本新設し、既存の柱の荷重を分散させます。既存部分も構造金物で補強しています。

左:隣家から鼠が入ったり、漏水が侵入したりしないように側柱間にブロックを積みます(柱との間は10mmほど開けています)。右:床を張っています。秋田君の後ろに補強壁がみえます。この柱は足元を10cmほど動かして垂直にしています。

内装に入っています。手前に構造用合板。奥にプラスターボードが見えます。総予算をにらみながら仕様を決めています。古くて黒い柱は大分みえなくなりました。右下:階段を上から見ています。隣家側壁には遮音シートを張っています。

玄関土間を仕上げています。今回は蛇門といわれる黒い1分石を洗出しています。排水口がないため、表面のモルタル分はスポンジでふきとります。この土間下にもスタイロフォーム40mmを敷き詰めて断熱しています。

最後の仕上げです。左:軒裏をワビスケで仕上げています。柱はペンキが塗られていたので艶消しEPでそれっぽく仕上げています。右:本玄関前の犬走りを打っています。茶色のモルタル洗い出し仕上げです。
長屋建の京町家を現代風にリフォーム

この築地塀と数寄屋門は、ほとんどそのままです。木部補修・塗装・瓦差替・土間洗い出し程度です。将来のことを考え、総予算の中で工夫しました。でも、なんとなく綺麗になりました。(^^ゞ

玄関外部です。建具は子持ち切子の糸屋格子(新調)。窓はペア硝子をFIXではめこみました。枡子格子と玄関下屋は既存利用。左側基礎立ち上りには床下換気口がみえます。手前の土間は楽土といい、水が浸透する雑草が生えない硬い土です。

本玄関外部です。木製建具は既存利用ですが、その内部にインプラス(内付サッシ)を新調しています。外部土間は逆勾配になっていたので打ち直しています。壁は弾性パレット荒壁調仕上。雨が当たる部分なので、ひび割れしにくい素材にしています。

床は紅松1等。玄関框は既存を削り直して再利用。舞羅戸も内部を下駄箱に改造して再利用しています。縦格子スリットはタモ積層材。壁はシルタッチフラットです。漆喰調なのに、艶がなく、綺麗なクリーム色で仕上がるのでおすすめです。

ミセノマとナカノマを1室にまとめて書斎にしました。付柱の出っ張りが気にならないように、壁一杯に本棚を設置しています。床はサワラ1等。敷居は松。建具はスプルース(縦框・突板共)。欄間部分の障子の向こう側にもペア硝子をはめ込んでいます。

天井は旧座敷と旧洋間を1室にまとめてリビングにしました。2室間の壁止は枠が主張しないように45度に加工しています。壁は珪藻土フラット仕上。床には、将来掘座卓がつけられるようにあらかじめ本体部分と断熱被覆を仕込んでいます。

左:リビングの天井です。柾目大板の間に天窓を開口しています。梁型は珪藻土で覆っています。右:浴室から洗面越しに台所を見ています。洗面床はクッションフロア。洗面入口はフラッシュ戸ですが、台所入口引戸とデザインを合せました。

階段の窓から台所を見下ろしています。吊り戸棚をなしにして、スポットで流しを照らしています。シンクの前に水切を入れその下はリビング側の収納にしています。コンロの左に勝手口があり、そこから光が入っています。

左:苦労した階段です(^^ゞ。既存梁を覆ってしまうと狭くなるので見せていますが、右の梁は付梁です。右:階段上部です。天窓が見えています。旧トイレは物置にしています。壁は紙クロスです(ビニールに近い価格の商品を探しました)。

この部屋は見かけは昔のままです。でも、天井は水拭の上、吊り直して断熱材を充填し、建具は桟補修して建て合せ。床も下地補強の上新畳としています。配線類も新調です。障子の向こうに広縁が見えますが、もともとここは台所で光は全く入りませんでした。
思った以上に綺麗に仕上げることができ、嬉しく思っています。解体していたら残せなかった2F座敷も見違えるようになりました。
どのような町家でも、お施っさんの思いが通じたら直す事ができます。また、このようなケースがあれば、是非声を掛けてみてください。お待ちしています。
