アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

京町家 燕の家

 お祖父さんの時代からお付き合いのあった、昭和初期の町家を再生することになりました。
 家族が増えるにつれ、何度も増築・改修を繰り返されたお住まいです。もともと、土産物屋さんをなさっていたのですが、もうお店を閉められて十数年の月日がたっています。
 今回の改修のポイントは、

  1.町並みに合わせて、京町家の外観を復元する。
  2.線路のそばなので、防音に注力する。
  3.躯体の補強をしっかりと行う。
の3点です。

工事写真

外観
外観

[改修前 外観]
 お店を止められた後、外部に壁を新設し、窓を全部塞いでおられました。外壁を解体すると、昔の窓がそのまま残っていました。建物の南側に植木が繁茂していますが、もともと、汲取用通路だったようです。

解体
解体

[改修中 解体]
 内部の建材はいったん全部撤去します。この状態から建物をチェックし、補強壁や金物付をしていきます。今回は、通り柱を新設しています。

基礎
基礎

[改修中 基礎]
 WC・洗面の間仕切り下の基礎を作っています。2Fの梁の真下に柱を入れて加重を分散させたいと思い、当初予定より少し壁の位置をずらすことになりました。基礎を作った後に土間コンクリートを打ちます。

補強
補強

[改修中 補強]
 梁が途中で切れていたので、屋根をそのままにして取り替えています。隣地のほうが地盤が高いため、雨が降ると漏水していたのですが、新しく布基礎を打ち、土台を30cmほど高いところに入れ替えています。

外壁
外壁

[改修中 外壁]
 2F外部の付格子です。格子内部の下塗りをしています。雨があたっても大丈夫なように、格子の後ろに水抜口をつけています。今回、壁はシルタcッチフラット。木部はワビスケを塗っています。

塗装
塗装

[改修中 塗装]
 杉板にオスモティンバーレックスを塗っています。濡れ色になり、雰囲気がぐっと良くなります。職人さんの奥に折カネの壁ができていますが、建物の角なので、安全のために新設しています。

出格子
出格子

[改修中 出格子]
 工事も最終段階です。全体のバランスを見ながら、格子の枠組を造ります。いつも直している出格子ですが、こうして新調するのは大工さんにとってよい経験になります。

植木
植木

[改修中 植木]
 松本君が、枝垂モミジを植えています。葉っぱが小さいのを選びました。今回も、「できるだけ成長しない樹で、背が低く花が咲くもの」という方針で植えています。灯篭は、もともと現場にあったものです。

竣工写真

外観
外観

もともと、お土産屋さんだったのですが、1Fには新しく出格子を新調。外壁も全部漆喰調に塗り替えています。南側には竹の手すりと代萩の簾をつけ町家らしくしました。

出格子
出格子

伝統的な糸屋格子を復元。内部はスリガラスがあり、そのなかにLEDを入れています(夜になると点灯して5時間後に消灯します)。実は、この格子の中はユニットバスです(^_^"

ツタイ
ツタイ

歩道の敷石は昔のまま。春日灯篭の両脇に、枝垂モミジとドウダンツツジを植えました。下地窓は、竹が腐ってたので、全部やり直しています。寒いと困るので内部の掛障子は和紙調のアクリワーロンにしました。

待合
待合

雰囲気は昔のままです。でも、玄関建具は、室内の格子と同じデザインにしました。玄関灯もそのままですがLED球にしています。

廊下
廊下

この廊下も待合の建具と同じデザインに統一しました。壁は土佐和紙を貼っています。

和室
和室

ダイニングから和室を見ています。間仕切りは2枚引込で全開可能に。天井を上げて梁を見せ、天窓を新設しました。障子だと明かりが入りにくいので、和紙のプリーツスクリーンにしています。

リビング
リビング

W2550のキッチン。カウンターは地桧。右奥には壁全面を収納にし地杉の扉をつけました。キッチンの奥は、ガスオーブン&ゴミ箱置き場です。

2F子供部屋
2F子供部屋

シンプルな部屋です。当初押入を2ヶ作る予定だったのですが、たくさんの本が置けるように、杉積層材で本棚を作りました。

寝室
寝室

畳を杉板に変えましたが意匠はそのままです。床の間下に浴室があり、柱が腐っていたので、補強の上3cmほどジャッキアップしています。

洗面・浴室
洗面・浴室

ごく一般的なみずまわり空間です。ご家族がたくさんいらっしゃったので、収納量の大きな洗面台を選びました。いずれもPanasonicです。

坪庭
坪庭

キリシタン灯篭の両脇に沈丁花と馬酔を植えました。手水鉢のまわりには、昔土産物屋さんだったときに使われていた、置物の台石を再利用しています。正面の塀は新しくブロックを積み、四国化成の美ブロSGという左官材を塗りました。

 実は、表屋が、母屋と5度ほどズレて立っていたため、建物がくの字に曲がっています。これをなんとか目立たないように、なおかつ地震のときに倒壊しないようにといろんな工夫をしました。なるべく邪魔にならないところに耐力壁を設置したのですが、うまく収まって大変よかったと思います。
 これからも、お施っさんのご要望を伺いながら、最適なリノベーション・改修をしていきたいと思っています。
現場監督 荒木 勇
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