アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

下鴨の京町家

リフォームの前と後

 昔、小さい頃にすごした京町家。
 どうしても仕事で、首都圏に離れなければならなくなりました。
 それから数十年。長い年月を経て再びご実家に戻ってこられることになりました。
 
 いろんな思い出がたくさん詰まった町家だからこそ大切に残したいものです。
 
 長い間空き家にしていてごめんね。これからは、末永く苦楽をともにして住みつづけていただけると思っています。

 ※写真にマウスを置くと施工前の写真になります。

京町家 外観
京町家 外観

 出格子を元の位置にもどし、玄関や2Fのアルミサッシも木製建具に入替。今回の改修を機に、虫籠窓や銅樋も新調。
 お住まいの雰囲気に合わせて鍾馗さんも。

京町家 通り庭
京町家 通り庭

 土間空間に据え置かれた置き流しを撤去し、畳敷の玄関に。右の襖を開けるとダイニングルーム。
 2Fの光が降り注ぐように階段もこの場所に移す。

京町家 火袋
京町家 火袋

 天窓からの光が2Fナカノマと1F玄関に降り注ぐ。
 構造をシンプルに見せる事が建物の持つ本来の美しさを引き出す。

京町家 ミセノマ
京町家 ミセノマ

 リビングからミセノマを見る。
 出格子は木製建具だが、室内側にペアガラスを入れ、明るさと断熱を確保。ミセノマの押入をキッチンに改造し、床をフローリング張に変え、快適なダイニングルームに。

京町家 オクノマ
京町家 オクノマ

 オクノマは本来の空間を尊重して再生。
 天井を吊り直し、壁を塗りなおし、建具を建て合わせ、畳を新調。もちろん、床下や壁内など見えないところは断熱性能を確保。増築されていた広縁は本来の幅に復元。

京町家 前栽
京町家 前栽

 オクノマ越しに離れを望む。
 母屋と一体となってみえるが、この離れの1Fは蟻害がひどく、床・壁・柱いずれもほとんど新調。(2Fはそっくり残しました)

京町家 広縁
京町家 広縁

 大きくなりすぎていた植栽をいったんリセット。
 建具はあえて木製の框戸に。下屋を伸ばすことで、建具が傷まないように配慮はするもののアルミに比べると冬は寒い・・・でも、それが町家。

京町家 2F階段
京町家 2F階段

 火袋の壁を取り払い、吹き抜けの光を2Fに引き込む。
 立ち起し、イガミツキにより、水平垂直が整った空間に。

京町家 2F座敷
京町家 2F座敷

 借家の間に物置として使われ、テープや金物が打ち付けられていた床の間を元の状態に再生。
 左の紙張障子を開けると前栽を見下ろすことができる。

京町家を『美容整形』ではなく『骨格』から直す

 家族が増えるにつれ何度もリフォームされた京町家。
 
 遠隔地にお住まいだったが、メールと写真で進捗をお伝えし、痛んでいるところは隠さず報告。安心して住んでいただくために、協力業者さんと一緒に最善を尽くした。
 
 工事中の写真をいくつか抽出。どんなリフォームをしたのか参考までにお伝えしてみたい。

京町家 内部生コボチ1
京町家 内部生コボチ1

 京町家の床を全面解体。町家の骨格から改修するために必須の工程。
 これで構造がどれだけ痛んでいるかおおよその見当をつける。

京町家 内部生コボチ2
京町家 内部生コボチ2

 内部解体後、建物のイガミや沈下を正確に採寸。
 全ての工事に影響する墨だし作業が始まる。

京町家 床組
京町家 床組

 建物のイガミ・沈下を直した後に、床組。残すものは残し、痛んでいるものは全て交換する。床脇の垂れ壁も、大切に残す。
 全て撤去することだけが良い家になるとは限らない理屈がある。

京町家 構造補強
京町家 構造補強

 補強梁を加工中の黒川大工。米松は目は悪いものの、化粧ではないため、乾燥・強度面から採用。
 座敷の棹縁天井は、昔のまま。

京町家 躯体の清掃
京町家 躯体の清掃

 人見梁(1F表に入る胴差)をサンダー掛。化粧で見せるための事前準備。
 右手に見えるのは左官仕上げ用のラス地。桧端板を詰張。

京町家 内部造作
京町家 内部造作

 工事も着々と進行。左にみえるのが、休憩用の湯沸しポットとコーヒーやコップが入っている収納BOX。これも工事現場の必需品。

京町家 出格子1
京町家 出格子1

 出格子組立作業。京町家のルールにのっとり、丁寧に再生。桧の柾目をふんだんに使っており、古色塗するのがもったいないくらい。
 左が桜井君。右が黒川君。

京町家 出格子2
京町家 出格子2

 先ほどの出格子部分を室内から望む。外部は用心のため、全面に工事用合板を張ってバリケードに。
 出格子下の葛石は、古くて味わいのある材料がないため、やむなく、中国産を流用。

京町家 縁側
京町家 縁側

 縁側は痛みが激しかったため、ほとんど新調。
 左にユニットバスの内壁がみえる。床は下地合板の上に縁甲板を張る。天井は化粧野地をそのままみせ、断熱材は野地上に施工とする。

 最初は、『解体して新築したい』との相談を受けた。理由を聞いてみると、車を置くスペースが欲しいからとのこと。いつも道路一杯に建てられている町家にとって、駐車場は避けて通れない問題。しかし、今回は、町家の保存を優先することになった。町家の改修をなりわいとするわれわれにとって、本当に良い選択をいただいたと思う。
 今回も、元の姿に再生。もちろん、長く住み続けるために『見かけ』だけではなく『見えないところ』まで手を加える。苦労も大きいが、竣工したときの達成感はなんともいえない。
 
 蘇った『構造』は、それ自体が『意匠』。そんなに厚化粧しなくても十二分に美しい。
 骨(構造)を直し、内臓(設備)が一新された京町家。安心で美しい空間が再生できたと思う。
現場監督 小野 敏明
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