下鴨の京町家
リフォームの前と後
昔、小さい頃にすごした京町家。
どうしても仕事で、首都圏に離れなければならなくなりました。
それから数十年。長い年月を経て再びご実家に戻ってこられることになりました。
いろんな思い出がたくさん詰まった町家だからこそ大切に残したいものです。
長い間空き家にしていてごめんね。これからは、末永く苦楽をともにして住みつづけていただけると思っています。
※写真にマウスを置くと施工前の写真になります。
リビングからミセノマを見る。
出格子は木製建具だが、室内側にペアガラスを入れ、明るさと断熱を確保。ミセノマの押入をキッチンに改造し、床をフローリング張に変え、快適なダイニングルームに。
オクノマは本来の空間を尊重して再生。
天井を吊り直し、壁を塗りなおし、建具を建て合わせ、畳を新調。もちろん、床下や壁内など見えないところは断熱性能を確保。増築されていた広縁は本来の幅に復元。
京町家を『美容整形』ではなく『骨格』から直す
家族が増えるにつれ何度もリフォームされた京町家。
遠隔地にお住まいだったが、メールと写真で進捗をお伝えし、痛んでいるところは隠さず報告。安心して住んでいただくために、協力業者さんと一緒に最善を尽くした。
工事中の写真をいくつか抽出。どんなリフォームをしたのか参考までにお伝えしてみたい。

京町家の床を全面解体。町家の骨格から改修するために必須の工程。
これで構造がどれだけ痛んでいるかおおよその見当をつける。

内部解体後、建物のイガミや沈下を正確に採寸。
全ての工事に影響する墨だし作業が始まる。

建物のイガミ・沈下を直した後に、床組。残すものは残し、痛んでいるものは全て交換する。床脇の垂れ壁も、大切に残す。
全て撤去することだけが良い家になるとは限らない理屈がある。

補強梁を加工中の黒川大工。米松は目は悪いものの、化粧ではないため、乾燥・強度面から採用。
座敷の棹縁天井は、昔のまま。

人見梁(1F表に入る胴差)をサンダー掛。化粧で見せるための事前準備。
右手に見えるのは左官仕上げ用のラス地。桧端板を詰張。

工事も着々と進行。左にみえるのが、休憩用の湯沸しポットとコーヒーやコップが入っている収納BOX。これも工事現場の必需品。

出格子組立作業。京町家のルールにのっとり、丁寧に再生。桧の柾目をふんだんに使っており、古色塗するのがもったいないくらい。
左が桜井君。右が黒川君。

先ほどの出格子部分を室内から望む。外部は用心のため、全面に工事用合板を張ってバリケードに。
出格子下の葛石は、古くて味わいのある材料がないため、やむなく、中国産を流用。

縁側は痛みが激しかったため、ほとんど新調。
左にユニットバスの内壁がみえる。床は下地合板の上に縁甲板を張る。天井は化粧野地をそのままみせ、断熱材は野地上に施工とする。
今回も、元の姿に再生。もちろん、長く住み続けるために『見かけ』だけではなく『見えないところ』まで手を加える。苦労も大きいが、竣工したときの達成感はなんともいえない。
蘇った『構造』は、それ自体が『意匠』。そんなに厚化粧しなくても十二分に美しい。
骨(構造)を直し、内臓(設備)が一新された京町家。安心で美しい空間が再生できたと思う。