祇園町 京町家
(今回も一部の画像に、マウスオーバーで施工前・施工中の画像をリンクしています)
厨子2階/間口2間半の京町家。
そのまま取り壊されるかもしれないほど痛んでいたが、たまたま、施主さまが、弊社で施工している現場の前を通り、意気投合。
大規模改修を検討することとなった。
乱雑に改修を繰り返された1階は、現況図を作成するのも一苦労。しかし、2階はほぼ昔の姿を留める。
特に2間半の間口いっぱいに仕込まれた『京間10帖』の座敷は圧巻。
今回の改修は、テレビ取材を受ける。
取材風景をごらんになりたいかたは、遠くへ行きたいに掲載
百年余りの時を越え、新しく再生されることに。
改修方針は、
・できるだけあるものを使う
・痛んでいる部材は極力取り替え
・新しい部材は、目立たないように、極力古くさく・・・
の三点。
1階は全ての間取りを『リセット』。
外観はご主人の強い希望により『虫籠窓』を復活。
もともと出格子があったが、車を停める為4枚引戸に。
軒桁は腐朽のため取替。
引戸・鎧張の壁は新調。
街並みとの調和を最優先に考える。
ミセニワ。
框は建物の奥に残された欅材を再利用。
玄関右には、奥様がご自分で製作されたステンドグラスをFIX窓として利用。
玄関から廊下まで全て畳。足ざわりのよい畳が来訪者をここちよく迎えてくれる。
左右の写真でみえる梁材は「玄関ホール左手の梁」以外は全て新調の上古色塗。
どの部材を取り替えたのかわからない所に、大工のこだわりが生きる。
和室を全面改修し板張りに。
縦桟障子戸や竿縁天井もきれいに再生。
使いやすさと、バランスがよく邪魔にならない耐力壁の確保に頭を悩ます。
写真左手の紙貼障子戸を開けると車が見える。
写真右手の襖を開けると玄関が見える。
忘れがちな和の空間構成がこの町家には今も息づいている。
蹴上16cmの階段。1Fから2Fまで2間を使い、贅沢に上がりきる。
年を重ねても楽に2階に上がれる工夫。
見上げると、杉板貼の化粧野地が本当に美しい。
あたかも、建てられた時からそのままだったような錯覚を覚える。
2階の間取りは既存を再生。
ガラス建具の向こうに虫籠窓がみえる。この虫籠は新しく作ったもの。
ちなみに製作中の写真はこちら 虫籠窓
そして、2F奥座敷はほとんど意匠は触らず。
天井吊り直し、木部埋木・塗り直し・畳下補強などのみに留め、余分な飾りは一切ない。
置床の雲板もそのまま残す。
実は、このような空間が一番美しかったりする。
今回のプロジェクトでは、
『意匠再生』
『構造改修』
『屋根全面瓦葺替』
『給排水/電気/ガス設備一新』
など再生工事のフルコースを施工。
工事途中には日本テレビの取材を受ける『ハプニング』も。
あるべき姿に戻った京町家。
その内部空間は、現代では得がたい『質感』があります。
現場監督 小野 敏明