アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

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町家探訪

5.町家 大沢家

(埼玉県川越市)

 埼玉県川越市は小江戸と呼ばれる程、江戸時代の名残が色濃く残っている町です。明治26年に町の3分の1を焼き尽くす大火に見舞われましたが、その際焼け残った蔵造り建築が教訓となり、後の川越の商家建築に大きな影響を与えることとなりました。
 徹底した防火対策の知恵や工夫が今なお多くの家々に見られ、独特のたたずまいを見せている川越市に、蔵造り特有の住まいづくりの知恵を訪ねます。

白井 今回は、からっ風が吹きおろす町ということで、埼玉県川越市にやってきました。川越市では、江戸・明治期に大火事に遭い、その対策として蔵造り建築という形になったとききます。
 こちらは、大沢さんのお宅です。川越で唯一、国の重要文化財に指定されており、江戸中期の1792年ごろに建築されました。

荒木 簡素な外観ですが、壁厚も立派で堂々として、立派な建物ですね。
 2階が低いですが、『つし2階』といいましてね、江戸に造られた建物に多い形です。
 川越は明治21年と26年、2度にわたり大火事に遭い、町の1/3を焼き尽くしました。その中で焼け残った大沢家の蔵造り建築を教訓として、川越の商家建築に大きな影響を与えました。

荒木 2階表に見える格子は『土格子』といいましてね。漆喰で塗り固めたものです。これも、防火の知恵ですね。

白井 こちらのお宅には、一際目を惹く巨大な棟と鬼瓦が乗っています。宮岡さんのお宅です。最初に拝見した大沢さんのお宅と一見して違いますが・・・
荒木 江戸期と明治時代に建てられた違いでしょうね。
白井 外見でみて特徴的なことはありますか?
荒木 そうですね。屋根がかなり急勾配ですね。6寸勾配はあると思います。当時は良い瓦が少なかったので、雨水が落ち易く、水が溜まらない工夫がされたのでしょう。
 あと、水切り抑えがあったり、風切瓦が平葺(簡略葺)されているのが、めずらしいですね。

白井 腰巻がありますが、これは何のためのものですか?
荒木 戸前包みともいいましてね。漆喰塗りがはがれたり疵ついたりしないための保護の役割もあるのです。
白井 宮岡さんはここで金物商をされてたということです。では、お店に入ってみましょう。
白井 お店に入りますと、天井が高いと感じますね・・・
宮岡 もともと店は畳敷きだったのですが、改装で土間にしたんです。

白井 古いお宅にはよくみる人見戸が、揚げ戸構えになっているようですね。
荒木 人見戸に「潜り戸」がついていて、大戸共に揚がるのは珍しいですね。
荒木 こちらの「方立て柱」は、外れるんですよ。やってみましょうか?

 窓の外側には観音開きの扉、内側には横引き土戸と板戸が三重に立て込まれていて、防火の役目を備えています。
 つし2階とは、家の屋根裏の物置場をさす。
古くは床を竹すのこで貼ってあった。「づし」ともいう。

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