アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

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町家探訪

吉良川町町家 細木家・松本家(続)

(高知県室戸市)

白井 お座敷の天井が高くて気持ちいいですね。
荒木 この町には全部お座敷があり、表はつし2階、奥は座敷にしてそのつし2階分の空間を利用して、天井を高くしています。
  座敷の壁には張り紙押えが施されている。これは、鏝の技術が開発されていなかった時代に、壁の仕上をきれいに見せるための抑えだったものの名残だが、隙間風を通さないという面でも役立っている。

白井 座敷庭に面した各部屋の風雨対策はどうでしょう?
荒木 これだけ軒が深いと、このような家内には本来雨戸の必要はないのですが、風対策に嵌め込み雨戸が設けてあります。
 雨戸の敷居溝も水が溜まらないような工夫がされています。

白井 町の中で、ひときわ目をひく建物があります。旧土佐街道の角にある表蔵です。松本光世さんのお宅です。
荒木 大変立派な蔵ですね。土佐漆喰は水に強くて割れにくく、厚塗りができるので、こうした多様な表現ができるのだと思いますね。
  一般の漆喰は、『消石灰+砂+のり+すさ』を配合したものであるが、土佐漆喰は、『地灰(塩消石灰)+砂+ネズサ(藁すさを発酵処理したもの)』を配合した土佐独特のものである。

荒木 土佐では風雨に対する備えにいろんな知恵を施しておられます。
床下をみますと、風を防ぐ石積で覆われています。京都ですと、暑さをしのぐために床下はできるだけ風を通すのですが、地域によって工夫が違うのがわかりますね。

白井 これは立派な蔵ですね。
荒木 そうですね。この建物には、蔵の中の物を火から守る工夫がされています。
この庇屋根のところに閂がありますね。これをはずすと、庇屋根ごとはずれる仕組みになっています。風が強い吉良川では、なんといっても火事が大敵。大火になった時に、蔵に付いている燃えやすいものをはずして、燃えにくい蔵本体だけを残す知恵が、みられます。
  蔵前には、火災の際に蔵を目張りするための味噌壷置場まで作られています。

  明治中期に建築されたといわれるお母屋は、痛みが激しくなったため、昔からのイメージを損なわないよう留意して改築と修繕がなされた。
 ここでも、張り紙抑えがかつてのままに施されている。
 また、柱には、昔のままの、栂の四方柾が使われている。

白井 この雨戸の仕掛けはおもしろいですね。
荒木 これは、サルといいましてね、戸締りの用心だけでなく、サルをかます事によって雨戸がさらに固定され、強い風雨にも耐えられるようにできているんですよ。

白井 これは、なんでしょう?
荒木 年棚(トク=特)を吊るといいましてね、京都では「恵方棚」ともいいます。
恵方というのは、正月に神様がやってくる方角なんですね。こうして、その年の恵方に向けて神棚を祀るんです。

白井 さて、海から丘へ雨風を防ぐ建物が調和する町、という名に違わず、町全体、屋根に、建物に、内部の仕掛けに様々な知恵と工夫が凝らされているのを、しっかり拝見させていただきました。
 そこに、町ぐるみで自然の脅威に向き合う心意気を感じました。

30分番組のため、一部省略して掲載しております。
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