火袋階段の京町家II
京町家改修工事の竣工写真をご紹介させていただきます。
京都では、道路が井桁状に走っています。昔は、同じ大工さんが同じ外観のお住まいを両替町1区画分まとめて作られたりしていました。今回の町家もそうしたお住まいの1つで昭和初期に建造されました。
駐車場を確保するため、表和室を1部屋減築。間取の変更を最小限に抑えながら、内装を全てリフォームしています。
お施主さまのご希望で、2Fは建具をつけなかったり、天井を一部張らずにそのまま小屋裏を見せたりしてリノベーションしました。
長屋建の建物だったので、隣家の状態を考慮しつつ、間口方向に構造壁を増やしています。室内は、1Fは漆喰調珪藻土と珪藻土と聚楽壁。2Fは珪藻土パターン仕上にしています。床はほとんど1等の杉板を張って納めました。写真をご覧いただければ詳しい説明が記載されています。

表和室を半間だけ解体し、減築しています。玄関建具はちょっと変わった格子ですがお施っさんに描いていただいた絵を元にしています。壁はシルタッチフラット。木部はワビスケを塗っています。

左:土間は南部石洗出し(ビー玉をちりばめました)。左の建具を開けると3帖の和室になります。正面の舞羅戸は2F押入引戸の再利用です。
右:台所入口からリビング越しに前栽を見ています。家の中心に台所を配置した大胆な間取りです。

TOTOさんのキッチンを据えました。キッチン右手は元奥座敷。仏間を加工して食器棚兼レンジ置き場に作り変えています。床の間の天壁床は思い切って杉板張りにしています。底目大板天井だけ残して内装は一新しています。

広縁から台所越しに玄関方向を見ています。内装は聚楽壁。和室の雰囲気が残っていますが、床だけ杉板を張っても特に違和感はありません。不思議ですね。

杉1等のプレカット階段です。真ん中の踊り場の下は、玄関前の舞羅戸からトオリニワに抜ける通路になっています。壁に養生テープが星状に張られているのは、左官補修直後のため_〓■●。竣工直前に誰かがキズをつけたらしく困ったものです。

階段上部は火袋を残しています。天窓を瓦12枚分もある大きなものに付け替えたのですこぶる明るい空間になりました。この空間を通って光が台所に降り注ぐ設計になっています。

右奥に玄関間の畳が見えます。正面の建具は古建具。2枚重ねてFIXとして取り付けたので、手作りのペア硝子仕様になりました。
左手の梯子は、市販されている2段ベッドの部品です。玄関上納戸への出入りの際に取り付けるようにしています。

右手はウォーキンクローゼット。正面は子ども部屋です。間仕切建具がみえませんが、これは取り外したのではなく、建具なしの仕様だからです。窓越しにベランダが見えています。

左:トオリニワに新設した下駄箱。12段×4列×3足=144足入ります。杉積層材+ラワンベニヤで作りました。奥に見えるのは前栽への通路です。
右:玄関上納戸に新設した本棚兼荷物入。こちらも大量に入ります。正面に火袋階段の空間が見えています。

施主さん支給の洗面器と水栓です。INAXのモザイクタイルのうち16枚だけめくり、黄色のタイルに張り替えました。どこにもないタイルパターンのできあがりです。右下のトイレ手洗も施主さん支給。埋め込み穴が合わなくてちょっと取付に苦労しました。
京町家のリフォームもいろんな形があります。既存の間取りをそのまま残す場合もあれば、家族構成を考えて、思い切って直す場合もあります。これからも、お施っさんのご要望を伺いながら、最適なリノベーション・改修をしていきたいと思っています。