二世帯が住む京町家
僕の学生時代の同級生の弟さんのお住まいです。
7年ほど前に、樋を直したり、瓦を差し直ししたお住まいですが、この度、息子さんと一緒に2世帯に改修する事になりました。
江戸の終わりの建物ですが、明治の終わりに大改修をされ、さらに昭和の中ごろに1Fは原型をとどめないくらいに大壁で改修されていました。
でも、新建材をめくると、素敵な梁や柱がたくさん出てきました。
当初の予定を大分変更し、改修しながら打ち合わせを重ね、使いやすいようにあちこち工夫してみました。
京町家はちょっとした工夫で素敵に変身

入口は狭いアルミ引違戸から掛鞘の広い木製片引戸に取替。格子裏の建具も木に変更。インターフォン・ポストとも格子の間に収まるように工夫しています。
ガスメーターは目玉親爺の家を被せてめだたなくしています。

出格子の左端です。エアコンは竪格子で隠蔽。1Fの上の軒天内に電気メーターが隠れています。
格子裏の木製建具はスリペア硝子。寒風が入らないようにモヘヤ・ピンチブロック・戸シャクリ・召し合せ断熱溝をつけています。

左の収納(下駄箱)は、一度撤去されていたものを今回復元。敷居下の穴に手を突っ込めば、板が外れてここにも収納できます。
一番苦労したのが葛石。隣家の外壁が邪魔して上がらないので、目立たないところで切断して4cmほど上げました。

改修前はここに階段!がありました。ニワに見える鎧張や木製引戸は今回復元しています。
左上:ニワに光がもれるように下地窓を。左下:勝手口の後ろに下駄箱。内部の金物はPanaの既製品パーツです。

細い煤竹を吹き寄せにしてみました。大屋根にポリカを張って樋を省略し、一文字瓦を見せています。
階段天井は古そうな網代を。手すりは在庫の杉小丸太をつけました。

ここは何もしないのが工夫(^^ゞ 素材の良さを生かしています。床を水平にし、天井を掃除し、建具を直し、壁を塗りなおしています。
襖はできるだけそのまま。昔の引手は可愛いですね。

2Fに子世帯が住むため、巨大なウォーキングクローゼットに改修。たくさん入りそうです。
エアコンやレンジフードのダクトをこちらに出すことで、居室を綺麗に見せています。

2Fオモテです。子供部屋なので、窓だけ木製に入れ替え、後はできるだけそのまま。内付サッシをつけたり、既存フロア合板の上に塩ビ系のウッドタイルを張ったりしています。
手前の和室は階段!だったところです。

左:正面の壁のなかに2F用の配管・配線類が詰まっています。本棚の後ろの板をめくるとバルブがでてきます。
右:周囲の取り合いの関係で勾配のない低い天井になったので、照明器具が平らになるように台座を作りました。

便器も手洗もシンプルな仕様。トイレの手すりは余った丸太。トイレの床は当初CFシートでしたが、弊社に余った楢フロアがあったので、方針変更しました。

2F子世帯用洗面です。もともと勾配のきつい副階段だったところ。
天井があまりにも綺麗なので、そのまま再利用です。洗面なのにすごい。入口板戸再利用したので、鍵用台座は工夫しました。

灯篭の火入口を手水鉢の台座に再利用です。
実は庭に2ヶも灯篭があり、大きいほうのいいとこどりをしています。他にも飛び石に化けたりしています。
京町家の見えないところをきちんと直す

施工前の外観と、竣工1ヶ月前の外観です。下屋がモルタルで塗り固められていたのですが、めくってみたら化粧野地がでてきてラッキーでした。
何本か母屋が折れていたので、接木したら屋根がシッカリしました。

庭を広げる一方で、大きな灯篭を始末し、石類も半分に整理しました。(右上のおじさんは解体担当の松本さんです)
モルタルが塗られた蔵の外壁も焼板を張ってすっきりしました。

左:排水が陶管なので布設替。通り庭を1m以上掘り進みます。
右:明治の終わりに2F座敷を大改修された時の梁が既存に繋がっていないことが判明。施主様を呼んで補強の仕方を相談します。

既存の梁も小さいため1尺に入替。その横に添梁を入れ、ずん切りボルトで緊結した上に、座敷の床梁を羽子板で引っ張りました。柱も大黒の横に1本添えています。これで大分しっかりしました。

給排水の仕込みが終ったら、基礎工事です。大和天井の梁位置にあわせて、葛石を並べます。もともとあった押入を復活させるためです。
左にみえる壁は隣家の外壁。将来隣から漏水しないように、足元にブロックを立ち上げます。

束石の根巻補強をした上で、土間に防湿用のコンクリートを打ち、床組を復旧していきます。湿気を吸い上げないように柱の足元に基礎パッキンを入れています。白く見えるのはサニーライト(断熱材)です。

左:尺2もある梁の間に断熱材を充填。2Fが子供部屋で1Fがおばあちゃん。これに遮音シートを張り上げます。
右:天井高が取れない広縁はサニーライトを張り上げます。

丸窓の塗りまわしをしています。あきらくんです。こういうところは、ベニヤを丸く切って壁に当てながら塗り込みます。
m2単価は高くなりますが、大変よいものです。

お多福の木製建具を加工しています。これだけだと寒いので、インプラス(内付サッシ)を入れます。
住宅エコポイントのお世話になりました。

大工さんが大工道具の搬出をしています。
ここは、本ゲンカン。昭和の時代に階段を新設された部分です。壁にテープが張ってあるのは傷予防。気を使いますね。
職人さんって、みんな素直でパクパク食べます。
実は、食事前にお住まいを点検したら、洗い出し土間に水が溜まって流れないことが判明。後日お詫び方々直しにいきました。
せっかく皆で頑張って直した町家。これからも大切に住み続けていただきたいなと思いました。
