職人今昔
8.錺・板金
板金は私の知る限りでは、屋根、煙突、ダクト、水切、樋などの仕事を指すが、昔昭和の初め頃は、いろいろな手仕事がお店の中で見られた。雨の日など、銅樋の鮟鱇の錺打出しや、六葉金物、垂木鼻金具、家庭用小物類の半田付けなど私の目を楽しませた。
私の店で、昭和五十年頃、九州・宮崎県の臼木郡の浄泉寺の山門を請け負った時、六葉金物と同じ物をと、金物屋へ出したとこころ、京都の金具店の主人がこの金具は私の店で製作し納めた品物ですとのこと、自分の店の加工の仕方に特徴を持って他の店と少しずつ型が違うのか一目で見分けられ、びっくりしたことがある。
戦後、室町の呉服の大店へ仕事に行った時、赤銅の樋(厚さも4㎜位で継ぎ手は鋲でカシメであり、さらに半田付けがされている)の外に鉄板の樋が二重に架けてあり、話によると銅を国に供出しないための手立てと聞き、主人の町家の住まいに対する思い遣りの深さに関心させられたことがある。その時、建物を新築する時全体の一割が屋根の費用に当てられるのだと聞かされた。
社寺など、屋根に使用される鬼の打出しには厚さ5㎜ぐらいの銅板を火で熱して、金槌や鏨(たがね)で叩き出す、この工程を何回も繰り返し細かい細工をし、綺麗に出来上がるが、今日の銅板は粘りが無く裂くいので打出すのに大変気をつかうとのこと。銅の腰葺の一文字葺で、ハゼの掛け方で真冬の銅板のノビを計算し葺き上げる。勾配も二寸五分以下の場合はよほど腕のよい職人でないと雨がもれる。ハゼの締め方で左右され、工事が出来上がり引渡し前に職人さんがハゼを直して廻られるのを見かけたものだ。
一文字葺などの腰葺で、今は見られない唐草の打出し模様も今は名前のみ残っているのが残念です。


