アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

職人今昔

6.屋根

 私の若い時代の屋根下地の殆どは二・五貫の木返し(75×12~15を150mmピッチ)の野地で、その上に土井葺(コケラ厚さ3㎜長サ30cm巾は色々)をノネ釘で打つ。ベタ野地(全面)では土井葺は化粧野地の部分のみで、良い建物では土井葺の足の長さが短い。また杉皮二~三重の下葺き割竹押えのところも見受けた。近年は全てベタ野地で空葺と言う桟葺が阪神の震災後多い。

 瓦の大きさも茶室の露地の中門などの百枚瓦、縁の上や、小屋根などに使う小並びともいう八十二瓦、平葺に使う六十四瓦、社寺などに使う五十六瓦であったが近年六十瓦がある。
 これは全部坪当りの枚数を表す。昔、若い時はたびたび瓦の葺替えをした経験があり、瓦の割付けや、棟やケラバの納まりが難しいことであった。今の瓦は山も谷も深く少しくらい切合せができるが、昔の瓦は平らに近く切合せも葺き方も大変難しく下地の瓦割を大工ができないと瓦師が仕事にならなかった。
 葺き上がりは、正面の左より斜めに通りを見、瓦並びを見るのが一番と聞いている。藁葺(わらぶき)・茅葺(かやぶき)・板葺【こけら、木賊(とくさ)、柮(とち)】・桧皮(ひわだ)葺・大和葺・銅葺・瓦葺(本葺・行基・平一文字)・石・銅・鉛・鉄などいろいろな素材があるが、大工が仕事でするのが板葺と大和葺という杉皮葺きで、大板野地又は、化粧小舞野地の上に杉皮を下向きに一~二枚貼り、その上に野縁で厚サを作りケラバ軒の七十㎜ぐらい控えて下地を組み、厚さは小口で五~七cmまで重ね葺きにする。上貼りは三~四枚ぐらいで葺き上げ、直竹φ二十五~三十㎜を釘で下地に四百~四百五十ピッチに止め、上竹φ三十mmを垂木に合わして染縄で結ぶ。杉皮の小口切は斧で切ると綺麗に仕上がる。板屋根も昔は良く大工が作ったが今は見かけることも少ない。

施工マニュアル

 銅葺では定版910×605を八ツ切、四ツ切などでいろいろある。特に銅葺で仕上げた後、上を歩く場合波瀬(はぜ)を元通り戻さないと雨が毛細菅現象で中へ水が廻るので最後に屋根屋さんが直して廻られた。今は空気中の酸で銅が早く傷むので、谷板も一文字葺きの銅もステンレスやその他の鉄板に変わり少し味がなく堅い感じがする。

 雨の多い日本では屋根の作りも多く、その呼び方も多様で屋根に関する名称も例えば、瓦では軒より軒巴・掛巴・万寿・一文字・刃根丸・箕甲・袖瓦・降棟・稚児棟・二ノ棟・獅子口・甍(いらか)・鳥伏間(とりぶすま)・熨斗(のし)・松皮鬢(まつかわびん)・青海波(せいかいは)・輪違い・菊丸と、棟も露盤(ろばん)・鴟尾(しび)・鯱(しゃち)・鬼面・経の巻・縋る(すがる)など屋根の型の呼び方も多様である。

 京町家の屋根は総じて浮くり(むくり)屋根で、棟近くの勾配は三寸ぐらいで軒では四寸以上になる。社寺の屋根は照り屋根で棟近くでは勾配もきついが軒では三寸五分から四寸勾配にするのが基本である。

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『全京都建設協同組合ニュース』H11年3月
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