アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

京町家のゲストハウスを検討される方へ

 ゲストハウス、ゲストハウス、ゲストハウス・・・
 『京町家を購入したんだけど、ゲストハウスに改修リフォームしたい・・・』
 『所有している空き家を利用して、ゲストハウスを事業を始めたい・・・』
 『ゲストハウスを運営しながら余生を過ごしたいので、物件を探している・・・』
 最近、問い合わせの3割ほどが京町家のゲストハウスに関するものになりました。
 不動産業を営んでおられる方もおられれば、全く初めての方もおられます。
 
 本当に高い買い物ですし、慣れない事業で心労を抱える方も多いです。
 そこで、弊社のスタンス、購入時の注意点、初めてされる方の心構えなどをお伝えしたいと思っています。

1.京町家物件の現状

 京都は、戦争被害が少なかったため、今でも多くの町家が残っています。昭和35年以前の木造建物は41,000軒現存しているといわれています。そのうちかなりの建物が京町家です(H25/10 京都市調査)。  また、古い建物を中心に空き家が多く10%以上が放置されており、相続や引越しなどで、売りに出されることも多々あります。
 
 しかしながら、京都市中心部では、不動産価格が値上がりしています。
 堀川より東、京都駅より北、丸太町より南は、特に値上がりが激しいです。建物には価格がつかなくても、土地が高いので、「小さい町家を購入する」としても、かなりの出費になります。
 
 また、状態のよい町家は少なくなりました。
 「建てられた状態のまま残っている」町家が売りに出ることはほとんどありません。
 大抵、増築をしたり、間取りを変えたり、化粧合板で覆われています。
 時には、町家に見えないように看板建築を施されている建物も少なくありません。
 
 ですので、「町家を土地代だけで購入し、簡単に直してゲストハウスにする」ことは困難です。
 町家補修の適正価格(目安)で改修できる物件が売りに出ることはないと思ったほうがよいです。

2.町家改修リフォームのスタンス

 上述の通り、全面改修リフォームが必要な京町家がほとんどです。きちんと改修リフォームしようとすれば、費用と工期がかかります。

 工場で造った材料を現場に持ってきてぽっと置くのとは、違う仕事になります。
 構造材の歪みを直し、腐った柱や梁を根継・補強し、荒壁を付け直していくには、大変な手間がかかるからです。
 ライフラインも一新します。ゲストハウス特有の設備も必要です。瓦や外壁も手入れをしないと建物が長持ちしません。そのため、小さい物件でも1,000万、少し大きくなると1,500~2,500万かかることが少なくありません。
 
 もちろん、構造を直さず、柱を隠して、ボードを真直ぐに張ってしまえば簡単です。改修費も格段に安くなります。外観だけ町家らしくリフォームし、内部は分譲住宅と変わらない仕上にすれば、安上がりです。でも、弊社では大工さんのモラルに反するため、建物のためによくない仕事はご遠慮しています。

 職人さんがたくさん入ると、小さい町家でも3ヶ月、少し大きくなると半年~1年かかることも少なくありません。
 構造補強だけで1ヶ月以上かかる事もしょっちゅうです。左官が入れば、乾燥期間が必要なため、数週間現場のお守をして仕事が進まないこともあります。
 桜・紅葉など、観光客がたくさん来る時期までに完成させたいお気持ちはよくわかりますし、弊社でもなんとかご要望に応えるよう頑張りますが、夜間突貫作業をしたり、見えない所の手間を抑えて無理に工期を縮めることは建物の寿命を縮めるためご遠慮しています。
 難しいことを言ってすみません。ご理解いただければ幸いです。

3.購入時の注意点

 ゲストハウスをお考えの場合、建物によっては許可が取れない場合があります。京町家は建築基準法施行以前の建築物のため、既存不適格建物といえます。もちろん、検査済証はありません。

 100㎡を越えると、用途を「居宅」から「簡易宿所」等に変更しなければなりませんが、用途変更をするには、建築確認が必要になります。しかしながら、京町家を今の建築法規に適合させることは、ほぼ不可能です。
 便所や浴室などの共用部、並びに管理室や倉庫などのバックヤードの面積も含みますので注意してください。
 実際には、長屋建の一部をゲストハウスにしたり、もともと旅館業施設であったりと、いろんなケースがあります。

 ゲストハウスが開業できるのは、第1・2種住居地域、近隣商業地域、商業地域の4つだけです。
 嵯峨野・岡崎などに多い、住居専用地域や、西陣・西院などに多い準工業地域ではゲストハウスは開業できません。
 無許可で開業すると、通報されてすぐに営業停止になります。いわゆる「ウイークリーマンション」の形態も、最低1ヶ月の契約書が必要と言われています。

 建物の主要構造部の種類区分ごとに、過半の修繕を行うと『大規模修繕』に該当し、建築確認が必要になります。主要構造部とは、壁、柱、床(最下層の床は除く)、はり、屋根又は階段を指します。
 ですので、あまりに傷みが激しく、屋根が朽ちてしまい、母屋や垂木を総入替するような改修はできません(もちろん、できたとしても費用が膨大ですが…)。
 また、一度減築して再度同じ面積だけ増築することも、建築確認が必要と言われています。たとえば、「トイレが朽ちたので、一旦解体して再度増築する」といったケースです。
 これは、以前は運用基準で認められていたのですが、最近は、非常に厳しくなっており注意が必要です。トイレが朽ちても、少しずつ材料を入れ替えて直していかなければならなくなりました(H27/12現在)。
 建築面積が減少してもダメです。京町家の水周りは傷みが激しい場合が多く、○○は京町家を本当に残していくつもりがあるのかと、考えてしまいます。

4.初めてされる方の心構え

 弊社でも、京町家のゲストハウスを何軒か手がけています。
 ゲストハウスのオーナーの方々は皆さんいろんな悩みをお持ちです。

 TVや書籍で伝えられているような「いろんな人との貴重な出会いに感激」する事ばかりではありません。

 旅行客は昼間も夜中もいろんな事を聞いてきます。近所の旨い居酒屋はないか、○○寺までの行き方は、座禅を体験したいなど…、コンシュルジュでもないのに聞いてきます。特に、町家の一部を住居とされている場合は逃げ場がありません。
 オーナーさんの中には、数週間お店を閉めて遊びに行ったり、面会謝絶時間を作ったりされている方もおられます。

 京都にもいろんな人が住んでいます。必ずしもゲストハウスを歓迎している人たちばかりではありません。特に外国の方が頻繁に出入りするようになると、風紀が乱れたり、ゴミが散乱したりするので、町内と上手くいかないこともあります。
 積極的に、町内行事に参加したり、道路清掃を心がけたり、旅行者と町内のイベントを催したり皆さん頑張っておられます。

 ゲストハウスとはいえ、京町家には変わりはありません。今の建物と違い、日ごろからの手入れが必要です。ベンガラを塗り直したり、鼠のかじった穴を塞いだり、火袋の上を掃除したり、何かと気を使います。
 開業前にきっちり全部直せればいいのですが、ご予算との兼ね合いから改修しない部分が残っていることがままあります。たとえば瓦が土葺きのままだと、台風の後は点検しないとずれたりします。排水が一部陶管のままだと、時々詰まるので、掃除をしなければなりません。
 また、旅行客が畳を汚したり、襖を破ったりする事もしょっちゅうです。ですので、あまりカリカリせず、少し余裕を持って運営するのがよいかと思います。


 
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