御番菜屋さんの改修
先斗町に面した小料理屋さんから改修依頼をいただきました。
息子さんが修業から帰ってこられたのを機に、1Fの店舗部分を広げることになりました。建物はだいぶ老朽化していますが、まだまだ使えそうです。
繁華街という大変工事がしにくい場所で、なおかつ工期も短いため、こうした店舗の改修に精通されている(株)中蔵さんにご協力頂いています。
今回は、京都市市街地景観整備助成金の適用を受けてリフォームすることになりました。
1) 施工 蟻害の柱を全て取替
往来の激しいところなので、足場を組んだ後、外部を養生パネルで覆っています。
内部解体前に既存カウンターを取り外しています。
できるだけ昔のイメージを残して改修するため、良い材料は再利用しています。
内部解体後、防湿シートを敷いて土間コンクリートを打ちます。鼠が絶対に入らないようにありとあらゆる壁の隙間にモルタルを充填しました。
すぐ北側にカラオケスナックが並んでいるため、遮音シートを張っています。
その上に胴縁を打っています。天井地もできてきました。
外部も並行して作業しています。京都市の指導で外観は京町家風に仕上げます。ベンガラを塗るため、材料を組み付ける前に木口を塗装しておきます。
外部はモルタル下地。工期優先のため、荒壁は編みません。
カウンターを取り付け、壁にボードを張っています。
カウンターの下はモルタルを起してカラークリートで黒く仕上げています。
このカウンターは以前と全く同じ高さ・幅にしています。馴染のお客様がこられても違和感がないようにという配慮です。
天井には、葦ボードを張り、染竹で押さえました。これも、昔の雰囲気と同じようにしています。
2)竣工 昔の雰囲気を再現し、清潔な内装に
左官壁はシルタッチ、塗装はわびすけ、樋は銅製、瓦は下屋のみ一文字葺です。菖蒲張の杉板はキシラデコール塗。これでエアコンを3つ隠しています。足元は、上手く治まらなかったので、亀腹風に仕上げました。
路地側は、実はほとんどそのまま。朱色の壁を漆喰調に塗り替えたのと、入口の建具を高くし、庇も上げて付け直しました。
出格子の内側は友待にしています。畳敷。聚楽調クロス仕上です。
新しく柱を2本建て、2Fの荷重を受けるようにしています。これでだいぶ安心になりました。
カウンターは古材にあわせて、5mほど延長しています。大黒柱の隣にも1本柱を建て、梁の荷重を分散させています。
天井は、葦ボードの継ぎ手に染竹を組み合わせています。本来は、染竹の上に葦を張るものですが、逆工程のため、壁際の納まりが大分苦労しました。
カウンター主体のお店ですが、後ろにテーブル席を6名分設けています。
テーブル席間の邪魔にならないところに柱を1本設けていますがこれも補強用です。
カウンター廻りは白木なので、無地の地桧・地杉材を使いましたが、古色に塗るところは、1等材にしてコストを抑えています。
カウンターがかなり長くなりました。桧柾目材を剥合わせて製作しています。
床はカラークリート仕上。調理場の壁は艶消キッチンパネル張。客席側の壁は聚楽を吹付けたクロスを使ったので本物に見えます(材料は本物ですが綺麗過ぎる…)。
2Fはほぼそのままです。壁を塗りなおし、アルミサッシを木製おたふく窓に変えただけです。
構造面では、左端の蟻害の柱を根継して5cmほど上げ、この壁の真下に柱を2本建てて梁を受ける仕事をしています。
彼は、この現場が終わった後、また、すぐ近くの先斗町の火事場の改修の担当になりました。どんどん、プロになっていくので、頼もしいですね。
このお店の御番菜は本当に美味しく、ミシュラン2016にビブグルマンとして登録されました。是非一度、訪ねてみてください。