井戸のある京町家
末 川 協 建築設計事務所さんからの依頼案件。
総2間で南向きのお住まい。1階の表は出格子風ですが、格子は柱から後付された素朴なデザイン。
2階の窓にも同じように素朴な格子。
母屋は間口3間、奥行き6間半。表から見て右手に玄関庭・ハシリ庭があり、その横に表の間、中の間、奥座敷、縁が並ぶ。母屋に続いて風呂、トイレが北庭のわたり縁に続いている...
ハシリニワに階段をつけている。最近、はやりの踏板の下に隙間のある意匠。
壁は中塗、土間は三和土。
枡子ガラス障子の向こうが井戸。竹の蓋の中にポンプが隠れている。水道配管を杉皮で隠しているのは弊社会長のこだわり。
ハシリニワは床がもともと貼られていたのを撤去し、もともとあったと思われる延石を再現。壁際の足元にみえる。
ゲンカンニワは洗い出し。地覆や延石は新調して昔の意匠を再現。正面にみえる光はロープで開け閉めする高窓。
今は火袋に絵が飾られている。
ダイドコは大和天井。奥座敷は竿縁天井。ベンガラをうす塗している。
縁側のガラス戸越しにフロ、トイレが見える。
上部の光は天窓。
木製戸の向こうに、通りに面した格子みえる。
オタフクの建具と吊床。
京町家にはよくあるパターン。
飾らない、飽きのこないデザイン。
つたい縁から見るのも楽しい。
建具がないため冬は寒いが、開放感を重視しそのままに。
建具も『あらき古材倉庫』にある弊社在庫と、既存の建具を再利用し、新しい建具は製作しなかった。
古い建具と、壁の左官塗がとてもマッチすると思った。
機会があれば、このような町家の改修をもっと数多く手がけたいと考えている。
このお住まいは大阪ガスの『すまう』2013 Vol52号に掲載された。