アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

下鴨 京町家II

 今回工事をご依頼頂いた建物は昭和初期に建てられた2階建ての仕舞屋(しもたや:お商売をされていない普通の町家)です。
 以前に住まわれていた方が既に浴室、WC、階段、2階等はリフォームされていたため、今回は省略。主な工事範囲は生活のメインとなるLDKと、そこから繋がる階段廻りが対象となりました。
 1階はもともと通り庭に面して表の間、中の間、奥座敷と、ごく一般的な配列だったのですが、今回の工事では奥の座敷を残してそれ以外をLDKの1室にしつつ、更には2階との関係にも配慮して計画をさせて頂くことになりました。
 
 今回の改修のポイントは、

  1.LDKを1室として連続性のある開放的な空間にしつつ町屋の質感と融合
  2.オープンの階段から2Fのフリースペースとの距離感を確保
  3.火袋の復元とWICの新設
の3点です。

本玄関 左:本玄関。右:台所外壁。
本玄関 左:本玄関。右:台所外壁。

式台、上がり框は桧で新調しています。踏み台も弊社で新調しました。もともと、2段であがっていたのを、3段であがるようにしています。壁は既存の聚楽を部分的に補修しています。

ダイドコ(リビング)
ダイドコ(リビング)

左手が台所。右側が階段下TV台です。階段の段板を延ばし、受桟をなくしてすっきりと納めています。床は楢無垢材のオスモ塗装。天井は、既存の竿縁天井を清掃しています(^_^)

セノマ
セノマ

間仕切りを撤去して、リビングと一体にしています。正面に見える表の出格子は既存のまま。障子は別の場所にあったものを移設し、和紙調のアクリワーロンに入れ替えています。

ダイドコから台所を見る。
ダイドコから台所を見る。

左手に玄関が見えます。台所には火袋があり光が差し込んできます。玄関と台所の間の天井に、少し幅の広い無目が見えています。これはもともと、欄間付の垂壁があったところです。キッチン入口の壁は艶消しEP塗で新設しています。

台所
台所

Panasonicのシステムキッチンです。窓があるので、吊戸棚は設置しませんでした。もともと、火袋を殺して天井が張ってあったのですが、今回の改修にあわせて、復元しています。

火袋
火袋

台所から見上げています。台所は、キッチンパネルを張りましたが、火袋は、昔ながらの荒壁土中塗り仕上げにしています。気持ちのいい空間ですね(^^ゞ"

ミセノマから奥座敷を見る
ミセノマから奥座敷を見る

座敷との間の建具は、今回撤去した間仕切りに使われていた建具を移設して再利用しています。古い建具の割には綺麗だったので・・

奥座敷
奥座敷

畳表替え、襖張替え、障子張替えをしています。昔ながらの意匠は、飽きがこなくて、内装がえをするだけで、しっくりします。

ミセノマから前栽を見る
ミセノマから前栽を見る

窓ガラスが、歪んで見えますが、これは、古い大正硝子をそのまま利用しています。前栽奥にみえる板塀は、トタンの上に下地をして焼板を張っています。みちがえるように素敵になりました。

2階座敷
2階座敷

奥座敷と同じ意匠の座敷です。ここは寝室として使われています。

 今回の工事で特に考慮したのは、火袋から入る光とLDKとの関係をどのように纏めるかということです。
 もともとは火袋下には天井が貼られていて、天窓はありましたが閉鎖的な空間に置き流しが設置されているという状況でした。 そこで、冬の寒さという問題点はありますが、せっかくの火袋からの採光や開放感は有効に利用したいので、天井を破りそこへキッチンを配置し、明るい開放的なキッチンを計画しました。
 このおかげで、隣のLDは、キッチンから間接的に入る火袋からの光と、出格子からの2方採光とし、こちらも同様に明るい空間とすることが実現しました。
 
 町家の中の間(ダイドコ)等は、特に光の入り難い位置にありますので、工事の際にはできるだけ自然光を採れるように計画しようと心掛けるのですが、間取りや構造の問題から断念することもしばしばです・・・・。
 今回は特にうまくいったと思います。!(^^)!
現場監督 米沢和也
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