アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

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京町家のリノベーション 隅切京町家


2F中の間から階段手すりを見る

 閑静な住宅街。角地に立つ京町家です。
 敷地形状にあわせ、隅切されているうえに、看板建築に改修されていたお住まいです。
 京町家を元に戻すとともに、快適に住める工夫をすることになりました。
 今回は、冨家建築設計事務所の指導を受けて施工にあたっています。

京町家の再生 外観

改修前外観 改修後外観
 施工前  /  施工後 

 1Fはたくさん柱が撤去されていて少し危ない状態でした。ひとみ梁の下は丸パイプ1本で2Fを支える構造です。また、雨水を屋根上で受けて屋内に流していたため、水漏れしてだいぶたくさん傷んでいました。

改修前外観 改修後外観
 施工前  /  施工後 

 外装はほとんどモルタル+吹付塗装で覆われており、何度も改修を重ねられています。これをできるだけ復元とともに、住居らしい意匠を取り入れることになりました。

京町家の再生 内観

1F玄関 1F階段 仕口の工夫
 1F玄関 / 1F階段 / 仕口の工夫 

 改修前は、内装が全て除去されており、ほぼスケルトンの状態でした。
 そのため、建物の状態が良いも悪いもすべて目視することができましたので、何をすべきかが明確でした。
 構造は可能な限り建物の水平垂直を直し、バランス良く耐力壁を増設し、建物の強度を取り戻すという工事をメインとしました(耐力壁増設といっても、もともとあったであろう位置へ柱、壁を戻していったという方が適確だと思います)。

基礎の補強 竹小舞 出格子
 基礎の補強 / 竹小舞 / 出格子取付準備 

 耐力壁の仕様は既存の壁と同様に竹小舞を下地に編み、荒壁を付けるという町家従来のものとし、地震の際に、建物全体が一体となって揺れてくれるよう配置しました。
 また、隅切りに面した建物全体と斜めになる部分の納まりが特に複雑でした。
 斜めになった部分に板庇を取付け、そこへ瓦を納めるというなんでもない作業も、斜めというだけで一苦労でしたが、出来上がった外観は本当に良くなりました。

玄関北側 玄関南側
玄関北側 / 玄関南側

 改修された玄関です。三和土土間に、中塗仕上。この玄関は新しく作ったため、柱や敷框などは全て新調しています。右写真正面奥には出格子が見えています。

取次間 DK
 取次間 / ダイニングキッチン 

 解体時に、元々あった階段の痕跡を見つけ、その位置に復元しています。DKのキッチンはもちろん新調です。汚れそうなところだけキッチンパネルを張っていますがそれ以外は全て杉などの無垢材で仕上げました。

2F表間
 2F表間 

 左に見えるのは、お多福窓。大正末期から昭和初期の町家に良く見られます。縁起がよいとして、棟札にお多福の面を見かけるので、験担ぎする建築界としては、うなずけるネーミングです。
 右に見えるのは、京からかみ襖。本来すごく高いものですが、弊社在庫品を流用しています。傷が入っていたり汚れていたりして、10年以上保管していましたが、やっと活用されました♪

2F中の間 2F奥の間
 2F中の間 / 2F奥の間 

 建具・畳・壁・天井など、内装は全て一新しています。
 階段手すりも新調しています。
 躯体を傷めないよう、窓はほぼ既存位置のまま付け替えています。紙張障子主体の間仕切りにしたので、大変明るくなりました。

洗面
 今回の工事は、斜に構えた町家をスマートな方針でシンプルに直すというコンセプトで設計されていました。
 特に、床は杉板、壁は中塗、天井は竿縁天井という仕上がほとんどだったので、最初はシンプル過ぎるのでは・・・と少し気になりましたが、出来上がってみるとそんなことはありません。まとまりのある統一された仕上により心地良い空間をつくることができたと思います。
 そこへ配置した古柱・古建具が、新旧のバランスを旨く調和させる役目を果たし、さらに落ち着きのある、『これぞ町家』というしつらえへと生まれ変わりました。
 古い中へ新しいものが馴染む、新しい中へ古いものが馴染む。
 町家改修の醍醐味を普段以上に味わうことのできた現場となりました。
 
 また、設計から自分で行うのとは違い、設計士さんのお考えの元、工事を進めるということは新鮮でもあり、自分自身の成長にも繋げることができました。本当にありがとうございました。
現場監督 米沢 和也 
 一般社団法人 日本襖振興会設立20周年記念誌に掲載いただきました。
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