アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

古民家のリノベーション 神道神籬教会


役物は再利用しています。

 築120年の古民家です。
 先代から受け継いできた教会を、もう100年後の未来にも受け継がせたいとのお施主様の強いご要望をいただきました。

民家のリノベーション 1) 施工

解体・歪み直し1 解体・歪み直し2
解体・歪み直し

 柱はどれも歪んでおり、天井もたわんでいました。壁も倒れかけていたり、建具が走らなかったり・・。一番の被害はやはり白蟻です。雨漏りをしていたせいで、床がぶかぶかになっていましたし、畳や敷居の表面までも食べられた跡が見受けられました。
 そこで、床下はすべて解体し、まず、躯体の腐朽している部分を撤去して、歪みを直す事から始めました。

小屋裏腐朽部分取替・補強1 小屋裏腐朽部分取替・補強2
小屋裏腐朽部分取替・補強

 過去に増築された際、屋根には谷が出来ており水が溜まってどこにも逃げ場がない状態でした。
 そのため、小屋裏もかなり腐朽し、小屋組の補強も必要になりました。

瓦葺き 棟瓦仮並べ
瓦葺き・棟瓦仮並べ

 谷部分は防水紙と板金を大きく張り伸ばす事になりました。
 棟瓦は、何種類も葺かれていたため、どの順番で並べたらいいかを、地上で検討してから施工しています。

民家荒壁材料 民家ベンガラ塗装
荒壁付・ベンガラ塗装

 新建材をできる限り使わず、壁は下地の小舞竹を補修して塗り替えることになりました。化粧の柱も8割方根継ぎをして再利用しています。
 天井板も雨漏りしていた部分以外は水洗いで綺麗にしています。
 今回の塗装は、自然塗料を使う事とになりましたが、ベンガラだとメンテナンスや、色合わせが困難です。
 そこで「オスモカラー」という自然塗料を調色して使いました。

軒桁・腕木取替 床下断熱材
軒桁腕木取替・床下断熱材敷設

 軒先は雨漏りと屋根の荷重で下がっていたので、腕木・軒桁・野地板とも新しく取り替えています。
 畳の下には、厚45mmのフェノバボードという断熱材を充填しています。かなり断熱性能が高い商品です。木星建具も残るのですが、少しでもよくなればと思い敷き詰めています。

民家のリノベーション 2)竣工

外観
外観

 二つ棟がみえています。左側の棟が昔からあった民家の棟です。右の棟は、その後増築された建物です。
 外部は焼杉板貼+白漆喰仕上。漆喰の補強材も塗布しています。
 木部は既存再利用。取替部分はオスモカラー調色塗。瓦はすべて葺き替えていますが、刻み袖や鬼瓦などの役物は再利用しています。

縁側と前庭
縁側と前庭

 屋根の構造材をほぼ全てやり直し、背筋が伸びたような軒先が蘇りました。
 手前の硝子框戸は再利用のため古色になっていますが、奥のガラス框戸はペアガラスで新調しています。
 軒先はGL鋼板一文字葺です。

神殿
神殿

 正面にみえる梁はほぼ腐朽していたので、虹梁っぽく下端を加工しています。
 壁は荒壁土の中塗仕上。神殿内部は白漆喰仕上。
 竿縁天井板は、一部雨染みがひどかった部分を張り替えて古色色合わせ塗装しています。
 敷框は既存再利用。各敷居は取り替えています。

続き和室
続き和室

 8帖と6帖の続き和室です。もともと襖がなかったので、改修後も襖はあえて入れていません。
 正面にあった建具は壁にやり直しています。天井のダウンライトは古い板を新調に開口して設置しました。
 右手の硝子付格子戸は古い建具の再利用です。

座敷
座敷

 座敷に腰窓が設置されていたのですが、今回改修するにあたり、掃き出しに取り換えています。
 濡縁も桧板で新調しています。
 右手の床の間がかなり下がっていたのですが、違和感なく直すことができました。

縁側
縁側

 縁側は、上小の桧板で張り替えています。
 窓越しに大屋根の化粧野地や腕木がみえています。ここは腐朽が激しかったため、ほぼ全面取り換えています。
 写真ではわかりませんが、外部建具の敷居も、スムーズに動くように真鍮甲丸レールを取り替えています。

刀掛
刀掛

 なにげない刀掛けですが、実はちょっと苦労をしています。
 もともとここについていたものでしたが、梁の歪みを直し、鴨居を直したところ、小壁が広くなってしまったので、梁から鴨居まで届かなくなってしまいました。そこで、既存の刀掛けを再加工して取り付けています。
 真ん中に見える吊束も届かなくなったので、木を足して古色塗しています。

納戸
納戸

 この部屋は、腐朽が進みすぎていたため、納戸に作り変えました。
 全て吉野杉のフローリング張りとしています。
 間仕切壁や棚がみえますが、納めるものをお伺いして、取りつけています。
 天井も壁も杉板を張っています。
 杉板は調湿効果があるので、納戸などに使う事がちょくちょくあります。

 今回の工事のメインは、間取りを変えたり、新しく造作家具を付けたりといった通常のリフォームとは異なり、『建築当時の状態に戻す』工事になります。ですので、少しでも家の歪みを直すこと、天井のたわみや、壁のちりを合わせることが重要になります。年月の経過のため、古材の変形が一定ではないのがさらに厄介でした。
 そのままでも使えるもの、補修して使えるもの、補修も難しいものの3点を見極め、耐震的にも補強をするという少し難しい工事になりました。
 でも、苦労した甲斐あって、古材と新材が違和感なく溶け込み、再利用している多くの材料も畳や壁が塗り替えられると、見違えるようにきれいになったと思います。  
現場監督 大久保 朋彦
 こちらのお住まいは、特定非営利活動法人 日本民家再生協会が運営する、民家再生奨励賞を受賞しました。
紹介ページ:神道神籬教会
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