アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

職人今昔

7.洗い・塗装

 私の若い時代は塗装屋さんと同じくらい洗い屋さんがあり、京都の古い建物では内外部共洗い工事をするのが普通に見受けられた。職人の持ち物はあたかも薬屋さんの置薬箱の如く、化成ソーダーに始まり硝酸・酢酸・アンモニア・硫酸・石を洗う鉛の瓶に入った硫化水素・水桶・簓(ささら)・水刷毛・手桶・釿(ちょうな)のような削り道具等…。洗いの職人さんは仕上色をどの程度に仕上げるかによって材質に合わせた薬の調合をする。薬を煎じながら味を見て甘いとか辛いとか言っていたのを思い出す。

 雨風の当たる部分は削り洗いと言う表面を少し削ってから洗う。仕上りは全体が同じ仕上りになり、上手な職人だと年数が経っても薬焼と言う変色もなく、大した腕前を見せていました。今は工事後の清掃に近い仕事にとどまり、古家の全体洗いをほとんど見かけることもなくなり、時の流れを感じます。

施工マニュアル

 塗装屋さんの職人も昔はOPやOS・エナメル・ニス・ラッカー塗が殆どで、刷毛を数本持ち、現在のように、テープ養生などなくて、足元養生のみでガクブチや廻りの細かい材を刷毛一つで仕上げる技術は職人の誇りでもあり感心したものです。ペンキ塗りも今と違い、良いものだとクロス貼の寒冷紗などを綺麗に下貼りをし、その上から下塗から上塗まで刷毛で塗り付ける。刷毛の大きさも、私の片手では持てないぐらい重く、一日それで仕事をするのも大変な苦労で見た目よりも重労働でもあった。
 紅殻塗も本来塗装屋さんの仕事だが、殆ど大工の若い衆が練墨と紅殻と油を合わして、布で塗り、爪の中まで墨が入り込み大変な仕事であった。町家のお店(たな)では3年に一度天井、小屋裏、火袋などお店の人の届かない部分を塗りに行ったものである。また、今あまり使わない柿渋は、室内の色付けの後色止めに使用すると落ち着いた色に仕上り、今も使えばよいと思うのだが一度試みをされてもと…。

職人今昔 小画像
『全京都建設協同組合ニュース』H11年4月
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