アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

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町家探訪

6.町家 水毛生家

(石川県野々市町)

石川県野々市町は、かつて加賀の中心的宿場町として栄え、昔ながらの風情を色濃く残している地域として有名です。
 この地域は年々3~40cmほど雪の積もる豪雪地帯でもありますが、非常に雪の質が重く、この地域の建築物には雪の重さに耐える工夫が数多く見られます。今回訪ねる水毛生家では、雪の重さに耐えながら、落ち着いた風情を守る、さまざまな工夫についてご紹介します。

白井 今回は石川県野々市町にやってきました。この地域は雪が多いことで有名ですよね。
荒木 特にこの地方の雪の質が重いですね。そのため、雪の重さに耐える工夫があちこちに見られます。
白井 柱が太く、格子が繊細で、そのようには見えないのですが。
荒木 屋根に工夫が見られますね。兼六園の雪釣りなどのように、雪への工夫が町全体にいい雰囲気を感じます。

 水毛生家は400年以上昔からこの地に住み、庄屋をつとめたほどの旧家です。
白井 こちらのお宅は女性的な美しさを感じるのですが、どういった特徴がありますか。
荒木 板格子と切り子格子になっていて、取り外せるようになっています。なかなかおしゃれです。

白井 無駄が無いですね。
荒木 切り子格子か東造りで、450ピッチぐらい貫が入っています。釘で打ってなくて楔で止まっています。格子は細かい桟が入っていることによって、家の力が分散されます。地震にも強いです。

白井 屋根がピカピカ光っていることに驚いたんですが。
荒木 石州瓦という、釉薬のかかった瓦が多い。1000℃ぐらいで焼くので凍て割れがないんですね。それから、雪が止まらずに滑り落ちるようになっています。雪止め瓦も特徴的です。屋根勾配を見ると、表は10:3.5ですが奥は10:5.5になっています。これは、表はやわらかく見せるために最小限度の勾配にして、奥は雪が滑り落ちるように勾配を急にしています。

 水毛生家に入ってまず目に付くのが土縁。柱を立ててもうけられた庇の下の空間の内、軒柱のとおりに建具を入れ建物内に取り込んだ土間を土縁といいます。
荒木 屋根の垂木を丸太と角で1本ずつ交互にしています。また小舞の見えるところをできるだけ細くして華奢に見えるようにしています。屋根の上側の一文字葺き銅屋根と土縁が非常にマッチしています。

白井 面取りしていて、遊びがあります。手が凝っていますね。
荒木 広く感じますね。雪の時でも通ることができます。

荒木 土縁の柱は背割といって、他が割れないように鋸で中心を引いています。このあたり無垢の木のよさが出ています。また、下は長さを合わせるだけで、留めていません。ひかり込んでいます。

荒木 蹴込みを見てください。猫止を打っているのですが、武者窓風にしています。凝っていますね。家の周り全て猫止めを打っていますので、風通しがよく、夏は涼しいですし、家も腐らないようになっています。

荒木 ねじ組みにも工夫があります。桁と桁がが交わる点に、斜めにすみ木がかみ合うようになっていて、それぞれ材木を削った部分が均等に、荷重が分散するようになっています。

荒木 この土縁の屋根は二重野地になっています。
白井 急勾配だと美しくないので、中側だけはゆるくしているんですね。

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