アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

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町家探訪

3.町家 石場家

(青森県弘前市)

 青森県弘前市は豪雪地域として知られており、年間平均積雪量は、積算して6メートル。軒下などには150cmも積もることもあります。
 この弘前市は、本州北部の都市のなかで、戦災にも大きな台風や地震などの天災にも遭わなかったほとんど唯一の都市といわれています。今回訪ねる石場家では、夏が短く冬の長いみちのく。雪に耐え、長い冬を快適に過ごすためのさまざまな工夫が凝らされています。
 弘前市に豪雪地域特有の住まいづくりの知恵を訪ねます。

白井 今回は、青森県弘前市にやってきました。弘前城跡のすぐ北側の大通りに面した石場さんのお住まいは、重要文化財に指定されています。このプログラムのアドバイザー、京町家作事組の荒木正亘さんにも、みちのくを訪ねていただきました。荒木さん、一見してどんな感想を?
荒木 強靭な骨組を、華奢な感じの外見で包んだ建物で、よい意味でひなびた感じのする建物ですね。

白井 居心地のいい家は、本当に心を豊かにしてくれます。20世紀の住まいの素晴らしい知恵をこの21世紀にもぜひ伝えたいものです。
 石場家は代々『清兵衛』を名乗り、弘前城に旬の食料品や日用品などのいわゆる『荒物』を納入する豪商で、津軽藩士との交流も深かったという。

白井 この戸(蔀)は、お店を開けているときは、降りてないのですか?
荒木 そうです。京町家にも蔀戸はありますが、こちらでは、日常的に大戸のまま昼間も利用されていたので、引戸に紙障子が入っていました(現在はガラス)。

荒木 蔀戸を降ろしてみましょう。このように、蔀梁に設けられた戸決におさめておくことができ、必要に応じて揚げ降ろしできるようになっています。

白井 土間が広がっています。広くて気持ちいいですね。特にこの土の感触がいいですね。
荒木 これは、三和土(たたき)といいましてね、消石灰とニガリで土を固めています。ニガリを使うのは、土が固まりやすいのと、掃いても埃がたちにくいからです。
白井 柱も梁も立派なものが使われていますね。これも積雪対策でしょうか。

荒木 そうですね。良い材料が使われているから、ちゃんと手入れをしないと…という気持ちが働くんだと思います。それが、材料が今でも痛んでいないことにつながっているのではないでしょうか。
 また、あちこちに仕口の跡がある古材が再利用されています。あえて見える場所に古材が使われているのは、新築を見せびらかせない遠慮と、『長い年月に耐えた丈夫な材だよ』という証拠を見せるためだったのではないでしょうか。
白井 弘前ならではの木材なんですか?
荒木 もちろんです。あすなろと呼ばれる「青森ヒバ」などが使われています。

石場 白井さん。こんなところにも収納ができるようになっているんですよ。
白井 ほんとうですね。
荒木 長い冬に備えて、いろんなところに工夫がされていますね。

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