アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

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町家探訪

10.庄家 門脇家

(鳥取県大山町)

 中国地方の最高峰として親しまれている大山。その大山の西北のふもとに位置する大山町は、季節風が海水によって湿気を含み、年間を通して曇りの日や雪が多いいわゆる「日本海側寄稿」とよばれる気象条件の地域です。
 この日本海側気候の中で、代々「大庄屋」を務めてこられた茅葺屋根の旧家が、235年前に建てられた当時の面影を強く残しながら、今も時を刻んでいます。

白井 鳥取県の大山町にやってきました。さっきから分厚い雲が来ては雨になり、そして去ってはこうして綺麗な陽射しになりというとても幻想的な天気が続いています。
 鳥取県の西北に位置する西伯郡大山町、この一体を阿弥陀川の恩恵を受けて発展した町の一つです。人工およそ6800、世帯数およそ1900、古くから稲作を中心とした農業が営まれてきました。また、間近に日本海を控え海の幸にも恵まれています。大山町の北の一角にある所子地区は人口およそ270、戸数75の小さな集落です。

白井 どうも、こんにちは。
荒木 どうぞ、宜しくお願いします。
白井 今、私はこちら側の南側の外壁をずーっと歩いてきて、荒木さんは北側を廻って来られましたけど、もう十分お家の周りを歩くだけでも散歩になるくらい立派なお屋敷ですねぇ。

N 所子地区でひときわ目を引く壮大な茅葺き屋根の屋敷、門脇家。236年前、1769年に建てられたものです。
白井 今回も京町家作事組の荒木正亘さんにいろいろと住まいの智恵や工夫を教えて頂だこうと思います。
荒木 何か大庄屋ということで、この地方の庄屋の束ねをされていたお家と聞いてます。大きなお住まい特有の、工夫があるのではないかと思います。今回もよろしくお願いします。

白井 門脇家、十一代ご当主の門脇卓爾さんに御案内を宜しくお願い致します。
門脇 それではどうぞ、お入り下さい。
白井・荒木 はい、有難うございます。

 豪壮な正門の軒下にあるしめ縄は、正月飾りの役目を終えた後、また改たに飾られたものです。この地域での縁起物としての仕来りは、それぞれの家に合わせて飾り方で今でも守られています。

 外壁は板を横に貼る「鎧張り」で、雨や雪解け水での痛みを防ぐ為「水返し」が施されています。

 正門はかつて長屋門であったのが本柱の方向に控え柱2本を建て、きりずま屋根を掛けた薬医門となりました。
白井 こちらの茅葺き屋根は本当に見事ですねぇ~。
荒木 そうですね。だいたい厚みが1メートルくらいですね。おまけにこのお家の棟がね、石ででできてる。

白井 えぇ!!石ですか?
荒木 はい。この石は「来待石」って言いましてね。この島根県のこの近くで取れる凝灰岩なんです。ですから少し加工がしやすいという利点があるので、雪や風に飛ばない様に重しとして使われているんです。

白井 しかし、荒木さん・・梁がすご~い太くて立派ですねぇ~。
荒木 そうですねぇ~。牛梁とか、牛引梁というんですけど・・・丁度牛が寝てるくらいの太さなんです。
白井 本当ですね。でも、こんなに沢山・・・。やっぱりあれだけの屋根を支えるのにいるんでしょうか?
荒木 う~ん…。やっぱり屋根の重量もありますし、この大きな建物を地震や台風で倒れないように、重みで、家を支えるという考え方ですね。それと、大庄屋という格式を保つために、これくらいの重厚な小屋踏みを作られたというのもあると思うんです。

 現在の村役場ともいえる大庄屋をになっていた門脇家では、屋敷と広間の二部屋で主な事務を行っていました。玄関の軒先には小さな傘かけが…。空間の有効利用です。

白井 入って、お部屋に入ってすぐ目についたのですけど、こちらの物々しいものはなんなんでしょう。 門脇 庄屋っていうのは村役人も兼ねてますので、事件が起こって、犯人がいた場合は逮捕しなくっちゃならないんですよ。いわゆる『捕り物道具』なんです。『鎌・槍・袖がらみ』っていうんです。
 こちらは、『六尺棒』といって、動きをとれないようにして捕まえる道具です。

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