アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

設計事務所さんと工務店

 よく、「設計事務所さんにお願いしたほうが良いかどうか悩んでいる」というメールを頂戴します。
 弊社でも、お仕事の3割程度は、設計事務所さんが入っています。
 メリット・デメリットいろいろありますので、参考になればと思い、整理しました。

設計事務所さんを通すメリット

・凝ったデザインに対応できる。
 良く、街中を歩いていると、周りの家並みと異質なちょっと変わった建物に出会うことがあります。
 変わった屋根・既製品でない不思議な窓・あちらこちらのスリットからこぼれる光・カラーコーディネィトされた外構…
 「本当によく考えているなぁ…」という思いをすることが多々あります。
 言い換えれば、「世の中に2つとない自分だけの家」ができるわけです。
 凝ったデザインをつくろうとすると、どうしても、たくさんの図面を書かなくてはなりませんし、既製品で対応できない部材はいろんなルートから探してこなければなりません。
 弊社にお見えになったお客様でも、そうした要望を強くいだいている方の場合は、懇意にしている設計事務所を紹介することもあります。
 弊社では大工さんの仕事をできるだけ見せようとする意匠になってしまい、言い換えると「昔どっかで見たような…」というデザインになりがちです。
 その点、設計事務所さんが入ると「餅は餅屋」ではないですが、本当にいろんな情報をもっておられるので、びっくりするような意匠になることもあります。
 いいかえると、最近流行りの「デザイナーズ住宅」になるわけです。

・安心が買える。
 工務店さんが、設計から施工まで一貫して行う場合、お住まいの出来・不出来はほとんど工務店さん任せです。お施主さんは大抵建築については素人ですので、手抜きされたり、ぼったくられたりしてもわかりません。
 その点、設計事務所さんが入ると、お見積が適正な価格か判断してもらえますし、現場に適宜出向いて、施工不良があれば指摘し、やりなおすよう指導してくれます。
 お施主さんがサラリーマンでなかなか施工中の現場を見ることが出来ない場合でも、自分の変わりに現場にいってくれるのです。
 また、工務店さんの中には、わりと頑固で言う事を聞いてくれなかったり、メールでのやりとりができなかったりして不自由することもあるのですが、そうした問題にも、きちんと対応してくれる設計士さんもおられます。たとえば、大工さんに「びしっ」と厳しい事を言ってくれたり、現場の写真を撮って添付ファイルで送ってくれたりという具合にです。
 いいかえると、プロの「代理人」を雇っているみたいなものです。

 なお、残念ながら、全ての設計事務所さんがこうした対応をしていただけるわけではありません。
 お施っさんの家族のようになり、資金繰りから、子どもの育て方・休日の過ごし方まで親身になってくれる設計事務所さんもあれば、自分の名前を売るために、地域に溶け込まない建物をつくって「先生」と呼ばれる設計事務所さんもあります。
 本当に人それぞれです。ですので、設計事務所さんを選ぶときは、自分と馬があうかどうか、何度もお会いして納得してから契約されるのが良いと思います。

工務店さんに直接頼むメリット

・大工さんの腕を生かした住宅になる。
 同じ10万円の建具を作るなら、「変わったカーブの不思議なデザインで、材料は安いが加工に費用がかかる」建具より、「シオジやナラの無垢板で材料を生かした」建具を作りたいと思うのが人情です。(^^ゞ
 意匠にお金をかけるより、材料にお金をかけたいとどうしても思ってしまいます。
 弊社ではできるだけ大工さんに腕を振るってもらえる現場をつくりたいので、どうしても木工事を重視することになります。
 システムキッチンや、ユニットバスといった設備にウェイトをかけるよりも、無垢材を使う事にウェイトをかけたいと思います。
 そうすると、長持ちし、飽きのこない住まいができると思っています。

・工務店の特徴が如実にでる。
 私の知り合いの大阪の工務店さんが、施工不良に気づいて、一度組みあがって外装が貼れた住宅をもう一度外装を全部めくって断熱施工をやりなおしたという話を聞いた事があります。
 弊社でも、施工後耐寒瓦を使ったのに「いて割れ」したので全面葺き替えをしたり、施工後20年経って不同沈下した建物を無料で床を全部めくって基礎補強したこともあります。
(これは、地盤調査費を捻出できないまま新築したためですので、ちょっと恥ずかしいですが…)
 また、在庫でよい材料があれば、お施主さんに工事の途中でも提案したり、職人さんのデザインで意匠を変えたりと、設計事務所さんが入らないことをいいことに、「好きなように」仕事をさせていただく事があります。(^^ゞ
 以前、あるお施主さんが東京に転勤するので、現場を担当した足達くんと一緒にお別れ会をしたのですが、その際、お施主さんから「いやぁ、やっぱり基本は『おまかせ』ですねぇ。いろいろおまかせするとどんどん家が良くなってきますからねぇ」と言われ、涙がでるほど嬉しかったことを思い出します。
 そういうお施主さんと腹をわった付き合いができるのも、直接ご依頼を受けていればこそだと思っています。
 日本は、地域地域に、腕のいい大工さんがいまでもたくさんおられます。そうした大工さんに腕を振るってもらえれば、後悔しない良い住宅ができると思います。

 設計事務所さん同様、残念ながら、全ての工務店さんが良心的な工務店さんであるとは言えません。
 こちらも、本当に人それぞれです。ですので、工務店さんを選ぶときは、設計事務所さんとおつきあいするとき以上に、ほんとうに一所懸命してくれるか、何度もお会いして納得してから契約されるのが良いと思います。それでも心配でしたら、ちょっとした簡単な工事を頼んでみる事です。棚板一枚でも、見積・挨拶・掃除・施工品質などいろいろ確認できます。
 余談ですが、施工品質の確保という点に関しては、大手と中小とはあまり差がないような感じを持っています。ただ、工事を進めていくにつれて、いろんな不具合を目にしますが、それを直そうとする監督さんばかりかというと、必ずしもそうではありません。
 監督さんは複数の現場を同時に受け持ち、新規のお客さんのための見積書作成や、プラン作成、資金繰、場合によっては営業と、いろいろやらないといけないので、大変多忙です。しかし多忙だからといって施工品質を職人さん任せにしてよいかというとそうではないと思います。
 極論ですが、しっかりした現場主任(大工頭)がいてその現場をきちんと監理してくれるのであれば、監督は材料の手配と工程管理をしてればいいので大変楽です。ただ、毎年のように変わる建築基準法と、木造住宅のプラモデル化(技術なくてもできる住宅の増加)により、そうした大工さんは本当に少なくなってきているので、施工品質は監督さんのモラル(姿勢)にかかっているといっても過言ではありません。

 なお、設計事務所さんが入る場合、工務店さんを指定される場合が多いと思います。設計図書に全て記載されているわけではありません。設計事務所さんそれぞれにいろんなクセがあります。そうしたクセを知り尽くしている工務店さんが一番良い施工ができると思います。
 「〇〇先生に設計をお願いしたいが、自分の知り合いの工務店さんを使って欲しい」という場合は、早めに先生に相談されるのがいいと思います。

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