古民家の再生 お茶室を住まいに
今回のお仕事は、内田康博建築研究所 様からのご依頼物件です。
お施主さんは、先祖から代々伝わるこの茶室を、大切に残していきたいというお気持ちを持っておられました。
ただ、実際にお茶事をされなくなり、そのまま放置するのはもったいない状態になりました。そこで、修復するのにあわせて、水周り設備をいれ、別宅として使えるように工夫しています。
伝統を守るのも大切ですが、このように、実際に利用価値がある形にリノベーションすることで、建物を残していくこともできます。
民家のリノベーション 1) 施工
お茶席として使われていた小さな平屋です。
屋根は大分傷んでいたので、垂木・野地とも入れ替える事になりました。
床組から全て内装をやりかえています。内部の壁も塗替です。天井は傷んでおらず、価値の高いものなので清掃の上再利用する事になりました。
土台は腐朽が激しかったので、桧材で入れ替えをしています。同時に、レベル調整のためジャッキアップをして建物全体の歪みを直しました。
万一天井に漏水すると大変なので、簡単な素屋根を作って工事をしました。
残せるものは残し、傷んでいるものは取り替えています。
民家のリノベーション 2)竣工
外観です。すっかり綺麗になりました。
寒さ防止のため、アルミサッシも一部使っています。
火灯窓は、直して、紙張障子をはめています。
躙口も、そのまま残して板戸造りなおしています。
縁側です。
垂木小丸太はほぼ再利用(3本のみ取替)。小舞、野地板は新調しています。
手前の変木が踏み台の変わりになっています。
深い軒はそのまま残し、天窓を新設して、明るい空間にしています。
玄関です。左の襖はお座敷。右の襖はなかの間につながっています。
昔の間取りそのままに、建具取替、襖張替、畳表替、床杉板張替をしています。
玄関建具は4本切子竪繁格子戸です。
南側の座敷はスリアゲ障子戸を復元しています。
右下に躙口、左に下地窓が見えています。
天井はかけこみ天井です。
躙口内部には、普段は断熱のための内部板戸をはめ込んでいます。
座敷の天井をみています。
天然の網代です。大変いい味がでています。飴色になって年月を感じます。綺麗に清掃し、吊り直してみると、そのよさが際立ちます。
外部はアルミサッシを入れましたが、雪見障子をはめ、室内からは目立たなくしています。
襖で仕切られたなにげない空間ですが、垂直・水平が直っているので綺麗にみえますね。
押入内部にも杉板を張り、合板類を使わない仕上としました。
洗面・トイレ共、左官塗壁+杉板を張って和風に見せています。
シンプルで落ち着いた空間に仕上がりました。
特に気をつけたのは、水仕舞と工事傷です。複雑な屋根のため、雨水の仕舞には苦労しました。また、一部仕上を残す事になったため傷をつけないように気をつけました。
茶室というと侘・錆が重宝されますが、生活するには寒暖に影響されないようにしなければなりません。よい物を残しつつ断熱にも配慮したので、大変喜んでいただけたのではないかなと思っています。