アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

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町家探訪

8.町家 吉井家・竹鶴家(続)

(広島県竹原市)

白井 またこちらは、とってもシンプルな茶室ですね。 荒木 6畳の部屋ですが、なかなかすきっとしています。
織部床といって、板を入れて軸を下げるという単純で明快な床という感じです。それから坊主襖といって、太鼓張りの襖になっています。
白井 お坊さんのようにつるっとしているからでしょうか。取っ手が変わっていますね。
荒木 こちら側が低く、あちら側が高い塵落しになっています。

荒木 あの奥は壁ですね?壁ですが、窓に見せるようにしています。
白井 心憎いというか、そうまでして形にこだわるというか。
荒木 ですから、このお部屋というのは落ち着いた感じがしますね。
竹鶴 実はこの部屋は産室でして、私もここで生まれました。(笑)

荒木 地袋の天板は栗が使われています。栗の板は暴れやすいといわれていて、天板にはあまり使われません。
白井 栗のいいところはどんなところですか。
荒木 水に強いので足元の土台によく使われます。この家の土台はみな栗が使われています。その中のいいものを使っています。

荒木 ここのところには本来柱が立つのですが、ここはまったく柱が無いですね。腕木を奥の部屋まで伸ばして、奥の部屋に柱を立てています。それによって広々と見せています。
 廊下の木を支える柱をなくしているので、強度を保つため腕木を座敷の中に伸ばし床の裏に柱を立てて支えています。そのため床が少し前に出ているのです。

荒木 樋が壁の中に入っちゃっています。大胆ですね。
白井 気候が温暖で、とってもいいのよということを自慢しているぐらいに遊んでますよね。

白井 竹原は本当に重厚な歴史のある建物ばかりで、いくら気候が温暖だといっても、さすがに100年、200年守っていくのは苦労がたくさんあると思うのですが。いかがですか? 竹鶴 江戸期に入り、塩田の技術が竹原に伝わりました。そして経済力が大変豊かになってきました。その財源でもって文化的にも学問的にも力を入れたのですが、そのようにして家にもお金をかけたのだと思います。

白井 一番お洒落なお金のかけ方ですよね。 荒木 だからこの建物というものが生き生きとしているのですね。守っていかれている努力というのはたいしたものだと思います。

 塩田の町だった竹原には、塩田視察のために広島藩主がしばしば訪れ、吉井家が休息所に供されました。
 広島藩主がお泊りになった同じ座敷。ことさらに華美に走らず武家風の格調が保たれています。
荒木 この部屋というのはお殿様が休憩された部屋です。床框が痛まないように、普段は蓋をしてあります。
白井 すごい工夫ですね。

荒木 すごいカッコのいい欄間です。
白井 斬新です。
荒木 桐の板を山形にして、下を水のようにしています。上の細い木は欅なんですね。1本の木をあの形にするのはなかなか大変だったと思います。
白井 硬くて凛として重厚な中にも曲線があるから、心が癒されますよね。

荒木 坪庭がありますが、この庇が杉皮の大和葺なんです。先を切るのが大変なんです。10枚ぐらい重ねないといけません。
白井 自然のものをこれだけきれいに重ねていくというのは大変な作業ですね。

白井 竹原の建物は、大胆なアイディアがいたるところにあります。そんなことができてしまうのは、とても気候が温暖で自然の脅威に晒される心配が少なかったということ、そしてもう一つは、塩田で生み落ちた財がベーシックにあったということ、この2つの安心感が生んだ冒険心という気がしました。

30分番組のため、一部省略して掲載しております。
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